いつもどこかで音楽が聴こえる街に
「みなとみらいSTREET MUSIC」

MINATO MIRAI STREET MUSIC
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「Kアリーナ横浜」「ぴあアリーナMM」「横浜みなとみらいホール」など多彩な音楽ホールが集積する横浜みなとみらいエリア。街中の至るところで、さまざまなジャンルのストリートミュージシャンがライブパフォーマンスを繰り広げているのをご存知でしょうか。
彼らは「みなとみらい STREET MUSIC」のミュージシャン。オーディションを見事通過しただけにライブは見応え、聴き応えたっぷり! 最近では事前にスケジュールを調べて訪れるファンもいるほどです。
「みなとみらい STREET MUSIC」は2014年からスタートした事業だそうですが、地区内の複数会場で演奏するスタイルになったのは2022年からとのこと。演奏会場を提供いただく地区内施設も年々増え、2024年度は29会場にも!
ますますヒートアップする魅力の秘密に迫ります!
インタビュー
鈴木克巳(すずき かつみ)様
プロフィール:一般社団法人 横浜みなとみらい21
事業推進部 事業推進課 担当課長
佐藤みどり(さとう みどり)様
プロフィール:一般社団法人 横浜みなとみらい21
事業推進部 事業推進課
現在「みなとみらいSTREET MUSIC」を担当されている(一社)横浜みなとみらい21の鈴木さんと佐藤さんに、その魅力と広がる展望についてお聞きしました。

――「みなとみらいSTREET MUSIC」の成り立ちを教えてください
鈴木さん(以下、敬称略):「MMSM」が始まったのは2014年。そのころ桜木町駅前では無許可で演奏するストリートミュージシャンが絶えず、たびたびトラブルになっていました。無許可での演奏はもちろんNGですが、むしろ彼らが堂々と演奏できる場を提供できれば、訪れる人もミュージシャンも楽しめ、街も会場となる施設も盛り上がるのではないか。そこで公募により選定したミュージシャンに、平日利用の少ない地区内の会場で演奏してもらおうとスタートしたのが「MMSM」になります。

――年々、演奏会場が増えているそうですね
佐藤さん(以下、敬称略): はい。嬉しい限りです。2014〜2021年までは通常演奏可能な会場は「クイーンズスクエア横浜クイーンズサークル」1か所のみでした。演奏は原則水曜日。平日利用の少ない施設の活用度をあげ、平日でもにぎわいのある場をつくっていこうという目的もあったためです。当時は演奏日ごとに募集を行い、事務局がミュージシャンを選ぶという、今とはかなり違うスタイルでした。
そんな中、多くの音楽施設が集積するみなとみらいを「音楽の街としてブランディングしていこう!」という動きが高まり(「Music Port YOKOHAMA」のことですね!)、このタイミングで「MMSM」のシステムも刷新してみてはどうだろうか、と考えたのです。みなとみらいエリア全体を演奏会場に、街の至るところで音楽が奏でられている。来訪者も居住者も就業者も音楽が楽しめる街にする……そんなコンセプトに賛同いただける施設を募ったところ、14か所の会場提供がありました。
鈴木:新たなシステムでは演奏の場を提供してくださる施設関係者の方々が、会場の雰囲気に合うミュージシャンを選べるようにしたのも良かったと思います。ホテルではジャズやクラシック、商業施設やオフィスではポップスなど、会場とミュージシャンのテイストがマッチし、施設、演者、観客すべてが心地よく音楽を楽しめるようになりました。おかげでさまざまな施設さまから「演奏会場に登録したい」とオファーをいただき、2024年度の会場数は29か所になりました。

――現在、登録ミュージシャンは何組いらっしゃいますか?
佐藤:2024年度は123組です。2023年度が105組だったので、登録ミュージシャンも着実に増えています。
なにより年間演奏回数の増え方がすごいです。初年度が約300回だったのに対し、2024年度は1月時点で、すでに500回以上の演奏回数になっています。年度全体では600回を超えるのではないでしょうか。「MMSM」が地区内でも認知されてきているのを感じ、事務局としても嬉しいですね。
ただヨコハマということもあってか、ジャズの演奏を希望される会場が多く、ロックの演奏可能会場がとても少ないです。今後はそういったジャンルの方にも演奏場所を提供できると、街なかで聴ける音楽のジャンルが広がり、さらに多くの方に自分好みのライブへ足を運んでいただけるのではと思っています。


――複数の演奏会場の提供や事務局の運営方法など、参考になさった事業があるのですか?
鈴木:東京都の文化振興事業「ヘブンアーティスト事業」は公共空間の利用や複数会場での開催など、私たちが考えていた新しい「MMSM」の運営と近いものがあり、参考にさせていただきました。みなとみらい地区は公園や広場、歩行者空間がバランスよく配置されています。演奏会場として活用できるオープンスペースが多いことは「MMSM」にとって大きな強みです。

――29か所の会場のほか、みなとみらい地区のイベントでも演奏し活躍しているそうですね
佐藤:はい。横浜赤レンガ倉庫、MARINE&WALK YOKOHAMA、横浜ハンマーヘッド、DREAMDOOR YOKOHAMA HAMMERHEADの4施設を結ぶ横浜みなとみらい新港地区の水際プロムナードで行われるイベント「BAY WALK MARKET」から、定期的に演奏の依頼をいただいています。海を眺めながら、キッチンカーのおいしい食事とともに心地よい音楽が楽しめると大好評です。そのほか「横浜駅東口はまテラス」の「クラフトビールフェス」や「GUNDAM FACTORY YOKOHAMA」と連携し、ガンダムの楽曲をカバーする!といった企画も好評でした。2023年に開催された「Music Port YOKOHAMA」のキックオフイベント(https://musicport-yokohama.jp/news/3215)では「MMSM」の演奏はもちろんのこと、会場のひとつであったグランモール公園では「MMSM」のミュージシャンが司会を務めるという、一風変わった関わり方もできて面白かったです。
鈴木:イベントのたびに演奏依頼が入るのは、みなとみらいエリアのイベントに花を添える取り組みとして周知されてきた証拠だと思います。今や「MMSM」は「街中に音楽を」という「Music Port YOKOHAMA」のミッションを体現する存在ですね。


――昨年、初開催の「Live! 横浜」にも参加されました。手応えはありましたか?
鈴木:はい。横浜のライブエンターテインメントのフェスティバル「Live! 横浜」と連携し、「MMSM」も初めてのフェスを開催。街のあちこちで60公演を行いました。そのうち2公演では2組のミュージシャンがセッションを行い、「クイーンズスクエア横浜」と「横浜ワールドポーターズ」の2会場では「Best Musicianをえらべ!」を開催。来場者にお気に入りのミュージシャンを投票してもらい、こちらもとても盛り上がりました。
また、音楽にちなんだ特製アクリルキーホルダーがもらえるスタンプラリーも展開し、普段ではなかなかできないことにチャレンジできたのもよかったです。
2025年も新しい挑戦を重ねていけたらと思います。


――「MMSM」の活動について、ミュージシャンや会場施設の方々、お客様の反応はいかがですか?
佐藤:ミュージシャンのみなさんからは「堂々と演奏できる場所をもらえて嬉しい」というお声をよくいただきます。「みなとみらいSTREET MUSIC」という名称ですが、会場は商業施設やホテル、公共空間なので正確にはSTREETではありません。でも、どの会場もきちんと演奏許可を得ているからこそ、ミュージシャンの方に安心して演奏を披露していただけます。
会場を提供してくださる施設の方からは「お客様が足をとめ、滞留時間が長くなった」「生演奏が聴け、会場の雰囲気がよくなった」といったお声をいただいております。最近では施設の方から「しばらく演奏予約が入らないけど……」と心配するお問い合わせもあり、演奏に対する期待感が高まっていると感じます。
さらに嬉しいことに少しずつですが、それぞれのミュージシャンのファンや「MMSM」自体のファンも増えているようなんです。事前に「MMSM」の公式サイト(musicport-yokohama.jp/street-music/)でスケジュールを確認し、「MMSM」の演奏を目的にみなとみらいに来てくださる方もいるようです。すごいですよね!


――これからの「みなとみらいSTREET MUSIC」の展望をお聞かせください。
佐藤:「みなとみらいSTREET MUSIC」は 2022年にリスタートしてから、確実に成長していると思います。今後は他都市とのコラボレーションにも挑戦してみたいですね。
鈴木:みなとみらいの豊かなオープンスペースを生かした「MMSM」の演奏は、「音楽のあふれる街」を大いに演出してくれています。いつか「MMSM」として、登録ミュージシャンが出演するイベントを地区内の大きな会場で開催できたら嬉しいですね。資金面をどうするのか? など課題はたくさんありますが……。
またミュージシャンへのアンケートでは「ミュージシャン同士の交流をもっと持ちたい」という声が聞かれます。交流から新たなユニットが誕生し、面白い音楽を生み出して大きく羽ばたいていく……そんな姿を想像するとワクワクします。「MMSM」からアリーナを満員にできるような大スターが生まれたら最高ですよね! もちろん、「MMSM」はこの街で純粋に演奏を楽しんでくれる……そんなミュージシャンをこれからもずっと大切に、そして一緒に「音楽の街」をつくっていけたらと心から思っています。
新しいシステムになって3年、まだまだ走り出したばかりです。これから何十年と、みなとみらいからミュージシャンを応援し続けたいですね。

――最後に横浜を音楽の街としてブランディングする「Music Port YOKOHAMA」との連携も増えていますが、「Music Port YOKOHAMA」への想いをお聞かせください。
佐藤:そうですね。「Music Port YOKOHAMA」事務局が更新しているYouTube Musicの「Music Port YOKOHAMAチャンネル」では、毎月の公演情報から各施設2曲の楽曲を選びPlaylistに公開していますが、なんと名だたるアーティストの楽曲とともにその月に公演を行う「MMSM」のミュージシャンの楽曲も選曲してくれています! ミュージシャンにとって自分達の演奏を多くの方に聴いてもらえるのは、とても嬉しい事ですし、Playlistを聴いてくれた方が「MMSM」の演奏にも興味を持って、ライブへと足を運んでいただけたらさらに嬉しいですね。
また「Kアリーナ横浜」の大型ビジョンでは公演情報のBGMに「MMSM」のミュージシャンのオリジナル曲が採用され、ミュージシャン名と曲名のクレジットが大きく映し出されています。あの大きなビジョンに自身の曲が流れて、クレジットがどーーんと映し出されたら、それは興奮しますよね! 素敵な機会をご提供してくださっているKアリーナ横浜さまには大感謝です。
鈴木:「Music Port YOKOHAMA」と「MMSM」は、同じ(一社)横浜みなとみらい21が事務局を行っているので、何か思いついたらすぐに連携が取れる位置にいます。これらの取り組みも双方の連携があってこそ生まれたものです。これからも「Music Port YOKOHAMA」の活動と連携し、今まで以上に「MMSM」の活躍の場を広げていけたらと思っています。

