クラシック音楽をもっと身近に・気軽に!
リニューアルした「横浜みなとみらいホール」
YOKOHAMA MINATO MIRAI HALL
FILE 03
そこで、新しくなったホールの見所や、開館25周年を迎えた、今までの…そしてこれからの「横浜みなとみらいホール」について、伊東総支配人にお話しを伺いました。
インタビュー
伊東 亜紀子(いとう あきこ)様
プロフィール:横浜みなとみらいホール 総支配人
横浜みなとみらいホールの総支配人である伊東亜紀子さんに、横浜みなとみらいホールの特徴や今後の展望などをお聞きしました。
世界で活躍する奏者も市内の小学生も利用する珍しいクラシックホール
――横浜市内にはたくさんの音楽施設がありますが、横浜みなとみらいホールにはどの様な特徴がありますか?
伊東:みなさんのイメージは、「大きなパイプオルガンがあるホール」だと思いますが、当ホールはクラシック専用ホールと市の公共ホールという2つの側面があります。利用される方の幅の広さと層の厚さも大きな特徴です。
例えば、リニューアルオープン後に、アメリカのビッグ5に数えられるボストン交響楽団の演奏会の翌日に、市内の小学生の発表会が開催されたこともありました。
この利用者の幅の広さ、層の深さを支えるのは、優れた音響設備、きめ細かい接客を心がけているレセプショニスト、それを裏で支える我々スタッフの存在があるからだと思います。
――今回のリニューアルでは、どういった所が新しくなったのですか?
伊東:今回は、1年10カ月をかけて、ホール全体での天井脱落対策や長寿命化等を目的とした大規模改修工事を行ないました。
ホールに関しては、音響特性に影響を与えない形で天井を新しく作り変えた上で耐震化を図りました。他にも、経年劣化による変色・汚れなどの修繕、心のバリアフリー対応トイレエリアやベビー室の新設、小ホールへの専用エレベーター改装など、様々な場所が変わっています。
トイレには、人が入ると光がつく人感センサーが導入されましたし、壁も、落ち着いたダークカラーに木の素材を生かし、さらに海を感じる波のモチーフを加えたデザインとなりました。以前との違いを探すのも楽しいかもしれませんね。
パイプオルガン&クラシックを気軽に楽しめるイベントも強化
――パイプオルガン“Lucy”の音色を生で気軽に楽しめる、何か良いコンサートはありますか?
伊東:それなら、開館時から続く「オルガン・1ドルコンサート」(100円もしくは1ドルで、お昼休みにパイプオルガンの演奏が気軽に聴ける企画)がオススメです。リニューアル後は公演時間が40分から30分になり、よりお昼休みに来やすくなりました。
また、お客様の声を受けて、「オルガン・1アワーコンサート」という姉妹コンサートも生まれました。こちらは全席指定1,000円で、演奏とオルガニストのトークを交えた1時間のプログラムです。
少しずつお客様にも定着してきていて、パイプオルガンを気軽に楽しみたい層にも、少し深く知りたい層にも好評をいただいております。
――1998年開館という長い歴史の中には、パイプオルガン以外のコンサート・イベントもたくさんあります。中でも印象的だったものは何ですか?
伊東:どれか1つに絞るのは難しいのですが、個人的に好きなのは、「こどもの日コンサート」です。毎年5月5日に開催しているのですが、オーケストラ、パイプオルガン、児童合唱、公募で集まった中学生プロデューサー達による企画など、盛りだくさんのコンサートになっています。
休館中の2021年にスタートした中学生プロデューサーによる企画は、中学生たちが大人と一緒になって企画を考えたり、楽しみながら運営に携わっている姿を見て、こちらまで元気とやる気をもらいました。
また、長い歴史があって印象に残っているものは、1982年に開始された「横浜市招待国際ピアノ演奏会」という若き俊英ピアニストを紹介する演奏会の、第40回記念特別演奏会ですね。40年以上続くピアノ・フェスティバルは世界でも類を見ないそうですが、第29回からこの演奏会の企画委員長を務める海老彰子さんと長年の友情で結ばれたマルタ・アルゲリッチさんとのデュオの名演は夢の様な時間でした。お客様のスタンディング・オベーションも忘れられません。
――普段クラシックを聴かない人でも楽しめる様な企画もありますか?
伊東:もちろんです。横浜はジャズ発祥の地とも言われていますし、実際にとても盛んです。一流アーティストによるジャズ公演や「みなとみらいSuper Big Band」(横浜みなとみらいホールが主催する中高生のビッグバンド)の公演も開催していますし、「みなとみらい遊音地」といって、夏休みにファミリーでオペラ・室内楽・ジャズなどの様々なジャンルが楽しめるイベントもあります。
また、パシフィコ横浜での「お城EXPO」との連動イベントなどもあります。意外と、クラシック好きじゃなくても気軽に足を運べるように、色々なイベントも多数開催しているんですよ。
音楽の街「横浜」をワンランクアップさせたい!
――コロナ禍でコンサートが開催できず、新たに配信にチャレンジされていました。これはどういった経緯で生まれたのですか?
伊東:新井(鷗子)館長の発案です。コロナ禍で活動の場が減少してるアーティストたちへの支援、これまでにないような芸術の楽しみ方を提供するという目的で、「横浜WEBステージ」を立ち上げました。
最新の映像技術を活用して、アーティストのパフォーマンスを様々な角度から楽しめるようになっています。例えば、ホール内にドローンを飛ばしたり、8Kカメラで360度撮影したり、小型カメラで鳥や虫の目線での映像など、今までになかった映像がたくさんあります。
――今後も、新しいイベントや音楽の楽しみ方を発表されるのですか?
伊東:もちろんです。2023年度は、開館25周年に当たったので、例年のイベントに加えて、プロデューサー in レジデンス2代目の反田恭平さんがプロデュースする音楽祭(3月19日~24日)を行いました。今後も、反田さんの独創性や発想力を生かした横浜ならではのプログラムを打ち出していきたいですね。
他にも、次世代育成プログラムやソーシャル・インクルージョンな活動にも力を入れていきたいと考えています。
――今後、「Music Port YOKOHAMA」に期待することはありますか?
伊東:横浜市には、たくさんの個性的な音楽施設がありますが、実はあまり、お互いの施設の個性や強みなどを知ることができていません。
漠然としてるのですが、今後はお互いの理解を深めて、それぞれの得意分野を掛け合わせることによって、新しい科学反応が生まれれば良いなと考えています。
当ホールは公共ホールという性格も持ち合わせているので、実はアウトリーチにも前向きです。ぜひ、横浜が音楽の街として広く認知されるように、他の音楽施設の皆さんと協力していきたいですね。
「横浜みなとみらいホール」ウェブサイト
https://yokohama-minatomiraihall.jp/